ミード(Mead)とは「蜂蜜酒」のこと。読んで字のごとく、蜂蜜から作ったお酒です。
しかし、この説明だとたいていは「何のお酒に蜂蜜を入れたのですか?」と誤解されます。そこで、より正確に言えば、「蜂蜜を発酵させて作るお酒」のことです。
ぶどうを発酵させるとワイン、酒米を発酵させると日本酒、りんご発酵させるとシードル、蜂蜜から発酵させるとミードです。
なお、ウイスキーに蜂蜜を入れたお酒がいくつかありますが、この場合は蜂蜜味のお酒であっても「蜂蜜を発酵させた」という条件に合わないのでミードには区分されません。
厳密には、ミードは「蜂蜜を水で割って、発酵させたお酒」になります。つまり、原材料は蜂蜜と水だけ。強いて言えばあとは酵母です。
ただし、果汁と混ぜてから発酵させたり、ハーブやスパイスを溶かし込んだバリエーションが存在します。
ただ、通常は上記3つともまとめて「蜂蜜を発酵させて作るお酒」として大きくミードと呼んでいます。
もっと細かい分類や各国の名前に興味のある方は、Groennfell Meaderyというところが以前作成したまとめがお勧めです。
どれもミードであることは変わらないのですが、作り方にもいくつかのバリエーションがあります。
ワインセラーが無くても、冷蔵庫で保存できます。そこまで冷やす必要はないので、冷蔵庫の場合は冷えにくいところで大丈夫です。
真夏の30度超えはよろしくないですが、開栓前であれば室温で保存できるものも比較的多いです。
ワインに比べると開栓後も日持ちしますので、冷蔵庫で保管して少しずつ飲むこともできます。
かなり安定していますので、室温保存で大丈夫です。開栓後も室温で長持ちします。
スパークリングワイン同様に冷蔵庫で保管し、揺らさないようにしてください。開栓後はすぐに飲まないと気が抜けてしまいます。
透き通ったタイプのものは、ほとんどは冷やしてストレートがお勧めです。温度やグラスも甘口の白ワインを参考にすると良いでしょう。
濃厚なタイプの場合は、室温程度で試してみて、もし甘みや癖が強いと感じた場合は氷を入れるなどして冷やす(そして少し薄める)というのを試してみるのがお勧めです。
冬でしたら、温めて飲むのもお勧めです。ホットワインを作るためのスパイスセットを買ってきて、ワインの代わりに濃いめのタイプのミードを使うとうまくいきます。温めるのが手間であれば、濃厚ミードをお湯割りにするのがお手軽でお勧めです。ただし、お湯は入れすぎないように気をつけてください。
前述の通り、ミードはバリエーションがかなり広いです。そのため、そもそもミードによっておすすめ温度が変わってくる上に、また飲む方の味の好みによってもだいぶ変わってきます。色々なパターンを試して、ぜひ自分の好きな温度を探してみてください。
お酒があまり得意でない場合は、ソーダで割ることもできます。その場合、ソーダは多くてもミードと1対1程度にしないとほとんどただのソーダになってしまうのでご注意ください。
逆に飲み足りない方は、ウイスキーやスピリッツを少し足したほうがお好みかもしれません。あまりに癖の強い酒を混ぜるとミードの味が分からなくなってしまいますので、ほどほどのものからお試しください。
定番としては、チーズやナッツ、クラッカーなど、いわゆる白ワインのおつまみがそのまま流用できます。
料理と合わせたい場合は、ミードの甘みに対抗して酸味(バルサミコや柑橘)の効いたイタリアンやスパイスの効いたフレンチなどが合いやすいです。
和食ですと、少し塩のきいている、いわゆる「居酒屋メニュー」が合います。
中華は試したこともあるのですが、料理とミードによって相性の善し悪しが極端に出てしまうため難しく、あまりお勧めしていません。
蜂蜜と水、そして酵母という自然界に存在するものだけで作れるため、ミードの起源ははっきりしていません。いわゆる「猿酒」と同様、人間がいなくてもできてしまうため世界最古の醸造酒と言われています。
たとえタイムマシンができたとしても本当の最初がどこなのかを調べるのは大変でしょう。
アフリカ、ヨーロッパ、ロシア、北米、オセアニアなど、世界の広範囲で作られていますが、現在でももっとも原始的な作り方をしているのが中央から北アフリカであるため、ワインやビールの起源も考慮し、人為的に作ったのは北アフリカあたりではないかと推測されています。
日本において、ミードは非常にマイナーなお酒です(ミードバーのイベントを初めた2010年ころは特に)。過去ほとんど流通したことがないため、お酒のプロの方であっても存在しか知らない、ということが多いです。一般消費者の間では知っている人を探すほうが難しく、注文もされないお酒は誰も売らない、ということで入手困難な品です。
ただ、エチオピア周辺ではテッジという「どぶろく蜂蜜酒」が非常にポピュラーですし、東欧でも一定の市民権を得ています。特に2015年ころからはアメリカで小さなミーダリー(ミード醸造所)が非常に増え、新しいスタイルのミードが爆発的に増えています。
残念ながらアメリカのブームが日本にそのまま来ることはしばらく無いでしょうが、2016年現在、日本酒の酒蔵などが日本でもミードを作り始めており、国内製造の美味しいものも出始めました。
そもそもなぜ日本にはミードがなかったのか?というのはあまりはっきりしません。日本固有種のミツバチでは採蜜量が非常に少なく、もともと蜂蜜自体が非常に貴重な品であり、それを大量に使って酒を作るという発想自体ができなかったのではないでしょうか。(※私の個人的推測です。)
ゲルマン人の習慣として、新婚の夫婦は新婦がミードを作って滋養強壮の薬とし、それを1ヶ月間飲むというものがありました。これがHoney(蜜)+Moon(月)でハネムーンになりました。
これは、蜂蜜自体が古来より滋養強壮薬として珍重されてきたことの他、蜂は多産(=一族繁栄)の象徴とされていたことも関連するのでしょう。
もっとも、ハネムーンの語源には別の説もあり、こういった語源の説明には必ず付く「語源には諸説あります」という注意書きはここに付記させていただきます(笑)