ミード(Mead)とは「蜂蜜酒」のこと。読んで字のごとく、蜂蜜から作ったお酒です。
しかし、この説明だとたいていは「何のお酒に蜂蜜を入れたのですか?」と誤解されます。そこで、より正確に言えば、「蜂蜜を発酵させて作るお酒」のことです。
ぶどうを発酵させるとワイン、米を発酵させると日本酒、りんご発酵させるとシードル、蜂蜜から発酵させるとミードです。
なお、ウイスキーやワインに蜂蜜を入れたお酒もありますが、この場合は蜂蜜味のお酒であっても「蜂蜜を発酵させた」という条件に合わないのでミードには区分されません。
蜂蜜と水、そして酵母という自然界に存在するものだけで作れるため、ミードの起源ははっきりしていません。いわゆる「猿酒」と同様、人間がいなくてもできてしまうため世界最古の醸造酒と言われています。
アフリカ、ヨーロッパ、ロシア、北米、オセアニアなど、世界の広範囲で作られていますが、現在でももっとも原始的な作り方をしているのが中央から北アフリカであるため、ワインやビールの起源も参考にすると人為的に作ったのは北アフリカあたりが最初ではないかと推測されています。
日本において、ミードは非常にマイナーなお酒です(ミードバーのイベントを初めた2010年ころは特に)。過去ほとんど流通したことがないため、お酒のプロの方であっても存在しか知らない、ということが多いです。一般消費者の間では知っている人を探すほうが難しく、注文もされないお酒は誰も売らない、ということで入手困難な品です。
ただ、エチオピア周辺ではテッジという「どぶろく蜂蜜酒」が非常にポピュラーですし、東欧でも一定の市民権を得ています。特に2015年ころからはアメリカで小さなミーダリー(ミード醸造所)が非常に増え、新しいスタイルのミードが爆発的に増えています。
そもそもなぜ日本にはミードがなかったのか?というのはあまりはっきりしません。私の個人的推測ですが、日本固有種のミツバチでは採蜜量が非常に少なく、蜂蜜自体が古代から存在は知られていたものの非常に貴重で、それを大量に使って酒を作るという発想自体ができなかったのではないでしょうか。
ゲルマン人(昔の北ヨーロッパ人)の習慣として、新婚の夫婦は新婦がミードを作って滋養強壮の薬とし、それを1ヶ月間飲むというものがありました。これがHoney(蜜)+Moon(月)でハネムーンになりました。
これは、蜂蜜自体が古来より滋養強壮薬として珍重されてきたことの他、蜂は多産(=一族繁栄)の象徴とされていたことも関連するのでしょう。
もっとも、ハネムーンの語源には別の説もあり、こういった語源の説明には必ず付く「語源には諸説あります」という注意書きはここにも付記させていただきます…。